Sweet River Adventures
About Sweet River
Our Trips
Photo Gallery
About the Yukon
Newsletter

ニュースレター

ニュースレター
バックナンバー 
Volume 1
Volume 2
Volume 3
Volume 4
Volume 5

ユーコンの風Vol.6(2004年3月)

冬の森を楽しむ。スノーシューを着けて、動物の足跡など探しながら歩くも良し、クロス・カントリーで冷気を頬に感じながら滑りぬけるも良し。人力が好きな私の選択肢には入らないが、人によってはスノーモービル(カナダでは、一般的にスキデューとも言うが、これは、マシーンを製造している会社の名前がそのまま呼び名になったもの)で森を抜け、山を越え、という楽しみ方をする人もいる。
そしてもうひとつ。ドッグ・マッシング(犬ゾリ)。これは、人力でもなく、エンジンに頼るでもなく、文字通り犬の引くソリによって移動する手段である。

ユーコン・クエストのゴール・シーン 8年前の冬、2ヶ月ほど24頭の犬を持つドッグ・マッシャー宅に住み込み、犬ゾリのトレーニングを受けたことがある。トレーニングと言っても、毎日ただ犬を走らせるだけではなく、犬の世話も大きな仕事であった。

朝8時に起床すると、まず自分の朝食を取る前に犬にお湯を飲ませる。大きなバケツ2杯に、前の晩から冷凍の鶏のミンチ肉を溶かすために入れておいた湯にさらに熱い湯を注いでぬるま湯を作り、これを1頭1頭に配って回る(肉は取り出し、これは夕方に与える餌にする)。ここで、このマッシャー宅では、なぜかバケツ2個を同時に持って回るのがルールだった。これが、重いのなんの。働き始めたころは、よろけながらも、滑らないように歩くのに必死だった。そして、犬が湯を飲んでいる間に、長い柄のついたアイス・ピックを持って、また1頭1頭の犬小屋を回り、その周辺に散らばる彼らの落し物をひとつひとつこそいで取って回る。これが、雪に凍りついて思ったより時間がかかる。マイナス40度まで気温が下がった朝など、自分の瞼に張り付く氷で時々前が見えなくなるので、時々休憩しては、目をこすり、鼻をすすって作業を続けた。ただ、この落し物の清掃作業は、大変なだけ、やる価値があった。まず、これらの作業を通して、犬との親近感、信頼関係が養われた。働き始めた当初は警戒していた犬たちが、毎日やって来ては世話をする私に次第に慣れ、心を開いてくるのがよく分かった。私は、餌を与えるときも、清掃をする時も、常に犬たちに語り掛けるようにしていた。そして、彼らの落し物によって、その犬の健康状態も見ることができた。気になることがあったら、マッシャーに報告するのも大切な役目だと思っていた。これらの作業に、毎朝約1時間を費やした。それから自分の朝食を取り、しばらく休んだ後、犬を走らせるためにまた、外に出る。

私と同時期、同じマッシャーに付いて犬ゾリのトレーニングを受けていたジェイニー。彼女と私は、その頃、生まれて数ヶ月の4匹の子犬のトレーニングを任されていた。私たちは名づけ親にもなり、それぞれを「ブッダ」「シバ」「ラマ」「ゼン」と呼び、毎日彼らと数時間を過ごした。一人前にソリを引けるようになるために、まず、子犬たちに人間と歩くことを教える。それから、走ることを教える。ハーネスを付けて走ることを教える。そして約1ヶ月後には、これらの子犬たちは立派に成犬のグループに混じってソリを引けるようになった。その躍動する背中や足をソリの後ろに立って見ていると、その成長ぶりに感動した。

犬ゾリには、独特の掛け声がある。マッシャーによって多少違いはあるが、一般的には、右に曲がれが「ジー」、左が「ハー」、加速したい時や犬を元気づけたい時は「ハッパッパッパ...」、止まれは「ウォー」。指示以外にも、ソリを走らせている間、犬たちに話しかけてコミュニケーションを取る。このことによって、犬たちはマッシャーがきちんと自分達の走りを注意して見ていることを感じ取ったりするのだ。

犬ゾリでユーコンの森を駆け抜ける 今年も、1300キロの犬ゾリレース、ユーコン・クエストが開催された。今年は友人のお姉さんがレースに参加していたため、その過酷なレースの様子は随時伝わってきていた。彼女は、ルーキーとして見事8位に入賞。一度、そのレースの様子を見たいがために、ホワイトホースの前の最後のチェック・ポイントまで出かけていった。いつそこに到着するか分からないため、寒いなか外に立って根気よく待つ。気温マイナス15度。時刻約8時30半。2時間ほど待ったところで、暗闇の中、マッシャーのヘッドランプらしきものが光り、彼女は犬とともに姿を現した。この前のチェック・ポイントからここまで、約16時間走り続けてきた人とは思えないほどの笑顔とエネルギー。しかし、あるマッシャーは言った。「一番辛いのは、疲れている犬たちをけしかけてレースを継続しなければいけないことだ。」

犬ゾリの経験は、今でも、大切な思い出になっている。今では、友人のドッグ・マッシャー宅に遊びに行ったり、誘いがあった時に犬ゾリを走らせてもらう程度だが、いつも、彼らの犬との信頼関係や愛情には羨ましささえ感じてしまう。ライフ・スタイルを考えてみても、自分自身がマッシャーとして生活をすることはないかもしれないが、その独特の世界には、機会があればいつまでも触れていたい気がする。

独り言

今年の冬は、随分クロス・カントリースキーにはまっている。一昨年までは、自己流で適当に滑っていたのだが、昨年初めてコースを受講して基礎を学び、今年はスピードを求めて滑るようになった。昨年の秋に珍しく体を壊し、体力回復のためにと今年1月からスキー場に通い出したのだが、今では週に3―4回は滑らないと気が済まなくなっている。

ホワイトホースは、ダウンタウンから車で5分のところにワールド・クラスのレースも行われたほどのクロスカントリー・スキー場があり、仕事帰りやランチ・タイムに立ち寄ってスキーを楽しむことができる。この気軽さ、手軽さがいい。スキー場にいる面々も老若男女様々で、週末の午後には、子供たちのスキー・レッスンが盛んに行われている。もちろん「真剣派」もいるものの、大半はレクリエーショナル・スキーヤーで、ワックス・ルームもスキートレイルも、いつもどこかノンビリしている。

ユーコンに来て、色んなアウトドア・スポーツを楽しむようになった。学生時代は、「体育」が苦手で、通信簿にはいつも「3」の文字が光っていた(というか点滅していた)。何をやっても「上手でない」ことは自身の中でプレッシャーになり、特にチーム・スポーツには、いつもどこか消極的だった。

しかし、今、ここではまず「楽しむ」ことを基本にし、今回のクロカンのように、その延長線上で「もっと楽しむ」ために技術を身につける意欲を持つようになった。ユーコンには、下ってみたい川や滑ってみたいトレイルが点在しており、技術はそこへ辿り着くための手段のようなものだと思っている。

先日も、友人たちとクルアニ国立公園内のトレイルを滑りに行った。いつものスキー場のコースとはまた違い、3 - 4000メートル級の山々を見上げながら滑ることに、何ともいえない解放感を感じた。こういう時こそ、「やっぱり、ここだよなあ」と改めてユーコンに愛情を感じたりするのである。

Yoshie Kumagae